リスニングができるというのはどういう状態でしょうか?
流れてくる英語にすごく集中してやっと聞き取れるということでしょうか?いつも集中が必要では疲れてしまいますね。
恐らく皆さんが獲得したいリスニング能力は一生懸命頑張って聞き取るリスニングではなく、鼻歌でも歌いながら英語を聞いて楽々聞き取れるリスニング能力ではないでしょうか?
今日ご紹介するリスニング学習はリラックスしている状態で楽々聞き取れるレベルを目指す学習法です。
リスニング能力の到達レベル目標
ネイティブが話すどんな言葉も楽々聞き取れる、というレベルを目指したい人もいるでしょう。そのレベルも努力次第で到達可能ですが、もう少し現実的な目標にしたいと思います。
ここでは「ネイティブが通常スピードで話す英語を楽々聞き取れる」というレベルにします。
ネイティブ同士が遠慮なく早口で話すようなスピードの英語はいったん目標から外します。そのレベルに到達できないということではないのですが、かなりの時間と努力が必要です。到達までのスピードの個人差が大きく、標準的なマイルストーンが示しにくいからです。
また多くの人にとっては「ネイティブが通常スピードで話す英語を楽々聞き取れる」というレベルで実用的に問題ないと思います。
そのため目標を「ネイティブが通常スピードで話す英語を楽々聞き取れる」にします。
到達までのマイルストーン
「ネイティブが通常スピードで話す英語を楽々聞き取れる」という目標を3つのステップで取り組んでいきます。
おおよその時間のイメージとしてステップ1が1ヵ月、ステップ2が2ヵ月、ステップ3が3ヵ月から6ヵ月です。全部で6ヵ月から1年ということになります。
これが長いと感じるでしょうか?短いと感じるでしょうか?恐らくこれまで英語に真剣に取り組んできた人ほど短いと思うかもしれません。そんな短い期間で到達できるはずがないと疑念を持たれるかもしれません。
確かに英語は短期間でできるようになるものではありませんが、リスニング能力は効率的な手順を踏めば半年から1年で不自由のないレベルまで到達できます。
それと知っておいてほしいのはリスニング能力は少しずつ時間をかけて伸ばすものではないということです。短期間で集中して一気に能力を上げると考えましょう。
特にステップ1とステップ2の合計3か月間は他の勉強はやめてリスニングトレーニングに集中しましょう。そのほうが後々効率的です。
1000時間リスニングしても聞き取れるようにはならない
これから紹介するステップの1と2をやっていない人が、ナチュラルスピードの英語を1000時間聴き続けても英語が聞き取れるようになる可能性は極めて低いと思います。
聞き取り能力の基礎を作らずにナチュラルスピードの英語を聞き続けても、モヤモヤと霧にかかったような音の塊がクリアに聞こえるようになることはまずないでしょう。信じて続けていれば急に英語として聞こえるようになると思うのは幻想です。
私自身、そのような無駄な時間を過ごしてきてしまったので、この記事を読んでいただいているみなさんにはそのような無駄な時間を使ってほしくないのです。
英語習得には時間がかかります。だからといって時間さえかければできるようになるものではないのも事実です。「モチベーション×正しい学習法」が大事です。
リスニング力高めるには次の2つの能力が必要です。
- 英語の音を英語の音として認識する能力
- 認識した音を素早く意味として捉える能力
英語の音を英語の音として認識する能力というのは、次のようなことです。英語に慣れていない人は、funとfanの音の違いが認識できず、どちらも「ファン」ととらえてしまうことがあります。日本語にはない英語の音のデータベースを頭の中に作り上げ、funとfanの違いを認識できるようにすることが第一歩です。
この記事ではこの能力形成をメインとして、次のリスニングトレーニング3ステップで方法論をご紹介します。
そして次に必要なのが、認識した音を素早く意味として捉える能力です。これもこの記事の最後のほうに書きますが、この能力形成に必要な訓練は多読です。また語彙を増やしていくことも必要です。例えば、take a look at, go on a trip, for a while のようによく使われる単語群は一塊として認識(覚える)しておくことが大事です。
「英語の音のデータベースを頭に作り上げる」リスニングトレーニング3ステップ
いよいよここからが本題です。どのステップにも共通する考え方は、「正確に話せる(発音できる)言葉は聞き取れる」というものです。この考え方は大事にして下さい。
ステップ | 学習内容 | 習得期間目安 |
ステップ1 | 発音 | 1ヵ月 |
ステップ2 | チャンクシャドーイング | 2か月 |
ステップ3 | 音声変化 | 3~6か月 |
ステップ1:発音をマスターする
発音は音楽で言えば楽譜に当たります。スイミングで言えば息つぎです。発音は英語学習を始めるための必須知識といってよいでしょう。
それなのに発音学習はおざなりになりがちです。どうしても面白みがないし、それほどきちんとやらなくても当面は英語学習に支障が出てこないからです。
しかし発音練習をきちんとやっていないと後々の英語学習で大変苦労します。何百時間も英語に触れているのに全然聞き取れるようにならない、自分には英語の才能がないのではと英語を諦めてしまう人もいます。まさか英語が進歩しない原因が発音にあるとは気がつかないのです。
リスニングに伸び悩んでいる人は改めて新鮮な気持ちで発音学習をしてみて下さい。悩んできたからこそ大きな気づきがあることでしょう。
幸いなことに発音学習は良書を使って1か月も練習すれば十分身につきます。発音書籍としてお勧めなのは英語耳です。
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ステップ2:チャンクシャドーイング
シャドーイングはお手本の英語のすぐ後に続いて真似して発音する練習です。同時通訳者のトレーニングとしても取り入れられている極めて質の高いトレーニングです。
特にリスニングには抜群の効果があります。シャドーイングを通してセンテンス単位で正確に発音できるようになることで、聞いた時にもはっきりと聞き取れるようになります。「正確に発音できる言葉は聞き取れる」の理屈です。
ただシャドーイングはやや難易度の高いトレーニングです。初級者だとお手本の英語を聞きながら同時に自分で発声することがうまくできずストレスを感じるかもしれません。
そこで取り入れたいのがチャンクシャドーイングです。チャンクとは意味ある数単語のかたまりです。例えばa lot of, what I said, Do you knowなどです。一息で言うのが自然なかたまりと考えてもらえればOKです。
チャンクシャドーイングはチャンクとチャンクの間に少し余裕があり、初級者でも取り組みやすいシャドーイングです。
その他、チャンクを意識するという効用もあります。チャンクを一つの単語として捉えられるようになると速い英語でも聞き取りが簡単になります。
例えばI didn't understand what my teacher was talking about.というセンテンスもチャンク単位で「I didn't understand」と「what my teacher was talking about」の2つのかたまりとして捉えるとリスニングが楽になります。
チャンクシャドーイングにはチャンク単位で収録された音源が必要です。パワー音読入門を活用するとよいでしょう。
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ステップ3:音声変化トレーニング
音声変化とは単語と単語が結びついて元の発音とは異なる音になることです。例えばDid youは「ディジュ」、Can Iは「ケナイ」のように変化することがあります。
この音声変化を知らないと簡単な単語でも聞き取れないということがでてきます。英語教材の音声だと聞き取れるのに、ネイティブの自然な英語だと聞き取れないという人は恐らくこの音声変化の学習が不足していることが原因でしょう。
音声変化はここまでに紹介してきた英語耳やパワー音読入門でもある程度学べます。ただ音声変化はリスニング上重要ですので、音声変化に特化した書籍で体系的に学ぶとよいでしょう。
取っ掛かりとしてお勧めなのが、洋楽を使って学習する英語の音声変化が学べる 洋楽を歌おう!です。洋楽を使った学習は発音やリズム習得にも効果があります。
その他、音声変化に特化した英語教材プライムイングリッシュもお勧めです。スロースピードバージョンの音声変化音声も用意されていてネイティブがどう発音しているのかよくわかるようになっています。
また最終的にネイティブ同士の速い英語も聞き取れるようになりたいと思う人はモゴモゴバスターにトライしてみるとよいでしょう。これがマスターできれば現地に住んでも苦労することは少ないでしょう。
これは意外?リスニング向上には欠かせない多読
上記のリスニングトレーニング3ステップは、「音を正しく認識する能力」を鍛えるものでした。
つまり、英語独自の音を勝手に(自分の知っている)日本語の音に変換することなく、英語の音のまま認識する能力です。
この能力が身につけば、リスニングはほぼ苦労しなくなるはずです。とはいえ、苦労なく英語を聞き取れるようになるためには、もう一つ必要なスキルがあります。
それは聞き取った音の意味を素早く理解する能力です。
簡単なセンテンスであれば、英語の音をそのまま認識する能力が身につけば、ほぼ瞬間的に相手の言っていることが理解できるようになるでしょう。しかし、少し複雑な文章になるとそうはいかなくなります。認識した音を素早く意味として捉える能力が必要です。
これに最適なのが多読です。多読では原則、意味がわからない言葉があっても辞書を引くことなく読み進めます。この文章は文法上どうなっているのだろうかとなども考えません。とにかくたくさんの英文を素早く読むのが多読です。
多読を継続していくと、当然本を読むスピードが上がってきます。読むスピードが上がるということは、英文の意味を捉える能力が速くなっているということです。これがリスニングにも効くのです。
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